ソトカサの茶会
2019.4.15[MON]
一日の中のお茶する時間
お茶を飲むことの大切さ。
子どもの頃、母方の実家に遊びに行くと、必ず伯母さんたちが台所にある大きなテーブルを囲みながらおしゃべりを楽しんでいました。
そこに顔を出し挨拶をするのが習わしで、すると伯母さんのひとりが、
「お茶飲む?」
と聞いてくれるので、
「飲みたい」
と答えると、席へと促され、黒塗の棗から茶杓で茶をふた匙掬って目の前の茶碗にトントンと。
空いた別の茶碗にポットからお湯を注ぎ回し、目の前の茶碗に移して、茶筌でシャカシャカと泡を立てて出してくれました。
待ってる間に食べる練りきりの御菓子が毎回の楽しみで、ほど良く味わった後のお抹茶の美味しさを楽しめるようになったのは中学を卒業する頃でした。
この時に、いつも大人の色んな話を聴いたり、逆に質問されたりするのが面白く感じていて、普段家では話さない話をすることもありました。
そんな姉妹の間で育った母親は、家でもお茶の時間を大切にしていました。
家では色々なお茶を飲む習慣があり、紅茶の日もあれば、煎茶、大好きだった玄米茶、芳ばしい蕎麦茶、高校生の頃になると海外で覚えてきたハーブティを楽しんだり、スウェーデンの伯母さんが贈ってくれるアールグレイやレディグレイは特にお気に入りでした。そしてそれらお茶に合うお菓子を作るのも母の楽しみで、ボクも、子どもの頃から母親にお菓子の作り方を習った事を、今、思い出しています。
それらが毎日の日課となっており、必ず一日のどこかでお茶をする時間が当たり前になっていました。
今思えば、その時間が家族をつなぎとめるために必要な時間だったのだと理解できます。
お茶をする時間は、ただお茶を淹れて飲むだけの時間ではありませんでした。
少なくとも、相手に伺いを立て、そのためにできることをし、一緒に時間を過ごす中でありふれた会話をし、甘い物を食べながら心をほぐし、相手の心に寄り添った時間を過ごす事が毎日のそこにはありました。
Fikaという考え方。
ちょうどソトカサの茶会を終えた日の夜9時過ぎ、スマホが鳴り、画面を見るとスウェーデンの伯父からテレビ電話の着信でした。
画面をタップすると、伯父の自宅の居間の風景でした。これから日曜の午後のFika(フィーカ)を始めるところだと言いながら、テーブルを囲む面々からの挨拶。
彼らにとって「Fika=お茶の時間」はただのティータイムではありません。まず、そもそもFikaは一日に食事の回数よりも多くあります。コーヒーやお茶を飲みながら、シナモンロールを食べるのが定番ですが、もちろん、それ以外にも色んな焼き菓子やパン、スイーツをお茶受けにします。
彼らが大切にしているのは、食べるものに限らず、その「時間」を何よりも大切にしています。
Fikaは、コーヒブレイクなど休憩を目的としているのではなく、互いの親密性を高めるための重要なコミュニケーションのきっかけの場として会話を楽しみます。
一日の始まりと終わりにFikaというくらいです。
自分流の茶会でいい
お茶にはとても良い効能があります。茶会にはなおさらです。
そもそも日本に伝わってきたお茶は、煎じて飲む薬効を重要とされてきた薬としての役割から始まっているくらい、先人たちの知恵がたくさん詰まったものでした。
今は、種類も、品質も、自分に合ったものを選べる時代になりました。試す事も簡単です。
ですが、その便利さが人から大切なものを奪っている事も茶会を通じて感じてもらえたら良いなと思っています。
ソトカサの茶会は、火を起こすところから始めます。
ライターやガスバーナーを使えば、誰でも火は簡単につけることができます。
ソトカサではそういうものはなるべく使わない考え方をしています。
火を起こすというのは、火をつける事とは異なります。
子どもたちには、火の赤ちゃんを置くためのベッドを作るところから始めてもらいます。
そのベッドで寝ている子を起こし、その火の子が育つように周りを整えてあげる事が必要になります。
色々失敗しながらチャレンジを繰り返し、やっとの思いで沸かすことのできたお湯は、ただのお湯ではありません。
そのお湯で野草のお茶を飲むのも良いですし、お気に入りのコーヒーを淹れるのも素敵なものです。
なるべくその場にあるものを使って、限りあるものを大事にする心を大人と子どもが一緒に考えて遊ぶ事を大事にしたいと考えています。
さて、こうしてできた熾火は、じんわりと、人を、心を温めてくれます。
その火を囲み、お茶を飲みながら何気ない会話を楽しむ時間が、格別のひとときなんですよね。
ソトカサの茶会、なんとなく伝わりますか?
梢で休むウグイスの鳴き声が、林の奥へと溶けていきました。
Fikaを楽しみましょう
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